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大阪地方裁判所 昭和34年(ワ)1512号 判決

原告 株式会社幸福相互銀行

被告 高木鶴雄 外七名

主文

一、被告高木鶴雄、同高木なつゑ、同高木栄、同高木節子及び同高木茂雄は、原告に対し、別紙第一物件目録記載の物件につき、大阪法務局江戸堀出張所昭和三十一年四月二十日受附第五五一九号所有権移転請求権保全仮登記に基き、昭和三十四年一月二十二日附代物弁済を原因とする所有権移転登記手続をせよ。

二、被告高木鶴雄は、原告に対し、別紙第二物件目録記載の物件につき、前同出張所昭和三十一年四月二十日受附第五五二〇号所有権移転請求権保全仮登記に基き、昭和三十四年一月二十二日附代物弁済を原因とする所有権移転登記手続をせよ。

三、被告林壮行、同木下酒造合資会社、同織田信太郎は、別紙第一、第二物件目録記載の各物件につき原告が、被告高木鶴雄、同高木なつゑ、同高木栄、同高木節子及び同高木茂雄との間において、前第一、第二項記載の所有権移転本登記手続をなすことを承諾せよ。

四、原告に対し被告高木鶴雄は、別紙第三物件目録記載の物件を収去し、同第二物件目録記載の物件を明渡し、同被告、同高木なつゑ、同高木栄、同高木節子及び同高木茂雄は、同第一物件目録記載の物件を明渡せ。

五、原告の被告林壮行、同木下酒造合資会社、同織田信太郎に対する第一次請求を却下する。

六、訴訟費用は、被告等の負担とする。

七、この判決は、原告において、被告高木鶴雄に対し金百万円、同高木なつゑ、同高木栄、同高木節子、同高木茂雄に対し金五十万円の担保を供するときは、第四項にかぎり、かりに執行することができる。

事実

原告訴訟代理人は、主文第一、第二項、第四、第六項同旨及び第一次請求として一、被告林壮行は、別紙第一物件目録(1) 記載の宅地についてなされた別紙登記及び仮登記の表示第一の一記載のとおりの仮登記及び同表示第一の三記載のとおりの登記並びに同目録(2) 記載の道路についてなされた前同表示第二の六記載のとおりの仮登記及び、同表示第二の八記載のとおりの登記並びに、前同目録(3) 記載の宅地についてなされた前同表示第三の十一記載のとおりの仮登記及び同表示第三の十三記載のとおりの登記並びに、別紙第二物件目録記載の建物についてなされた前同表示第四の十六記載のとおりの仮登記及び同表示第四の十八記載のとおりの登記の各抹消登記手続をせよ。二、被告木下酒造合資会社は別紙第一物件目録(1) 記載の宅地についてなされた別紙登記及び仮登記の表示第一の二記載のとおりの仮登記及び同表示第一の四記載のとおりの登記並びに、同目録(2) 記載の道路についてなされた前同表示第二の七記載のとおりの仮登記及び同表示第二の九記載のとおりの登記並びに前同目録(3) 記載の宅地についてなされた前同表示第三の十二記載のとおりの仮登記及び同表示第三の十四記載のとおりの登記並びに別紙第二物件目録記載の建物についてなされた前同表示第四の十七記載のとおりの仮登記及び同表示第四の十九記載のとおりの登記の各抹消登記手続をせよ。三、被告織田信太郎は、別紙第一物件目録(1) 記載の土地についてなされた別紙登記及び仮登記の表示第一の五記載のとおりの登記及び同目録(2) 記載の道路についてなされた同表示第二の十記載のとおりの登記及び同目録(3) 記載の宅地についてなされた同表示第三の十五記載のとおりの登記並びに別紙第二物件目録記載の建物についてなされた前同表示第四の二十記載のとおりの登記の各抹消登記手続をせよ、との判決並びに物件収去、明渡請求部分について仮執行の宣言を求め、第一次請求が理由がないときは、予備的請求として主文第三項同旨の判決を求め、

その請求の原因として、

一、別紙第一物件目録記載の物件は、被告高木なつゑが十二分の四、同高木鶴雄、同高木栄、同高木節子、同高木茂雄が各十二分の二宛の持分で、共有する物件であり、同第二物件目録記載の物件は、被告高木鶴雄の単独所有物件であつたところ、以上被告五名(以下単に被告高木鶴雄他四名という)は、昭和三十一年四月十九日、原告との間に、被告高木鶴雄が原告に対し当時負担し及び将来負担することあるべき金融取引上の債務につき被告高木鶴雄が履行を怠つたときは以上各物件を、金三百五十万円の債務の代物弁済として原告の一方的意思表示により、原告が取得する旨の代物弁済の予約をなし権利者を原告登記原因を右代物弁済予約とする主文第一第二項記載の如き所有権移転請求権保全の仮登記を了した。

二、原告は、その後被告高木鶴雄に対し手形貸付の方法で融資を続けていたが、同被告は、昭和三十四年一月二十一日現在別紙手形目録記載の約束手形七通合計金額三百九十三万八千円の支払を遅滞していたので、原告は右同日、前記予約に基き、右同日附の書面により、前記第一、第二物件目録記載の各物件を、代物弁済として取得する旨の通知を発し、右通知は、翌二十二日、物件所有者たる被告高木鶴雄他四名に到達した。

三、しかるに、前記仮登記後において、前記代物弁済の目的たる別紙第一、第二物件目録記載の各物件につき、左のとおりの登記ないし仮登記がなされている。

(一)  昭和三十二年十二月二十一日、被告林壮行を権利者として、請求の趣旨第一次請求一記載のとおりの各登記及び仮登記、(二)昭和三十三年八月七日、被告木下酒造合資会社を権利者として、請求の趣旨第一次請求二記載のとおりの各登記及び仮登記、(三)昭和三十三年八月二十六日被告織田信太郎を権利者として請求の趣旨第一次請求三記載のとおりの各登記

四、以上のとおりであるから、原告は前記代物弁済に基き、被告高木鶴雄他四名に対しては、別紙第一物件目録記載の物件の、被告高木鶴雄に対しては同第二物件目録記載の物件の各所有権移転登記手続を求め、且つ被告高木鶴雄は、別紙第一物件目録記載の宅地上に何等の権限なくして同第三目録記載の建物を所有し、その敷地を不法に占有し、また、被告高木鶴雄他四名は別紙第一物件目録記載の物件を、被告高木鶴雄は同第二物件目録記載の物件を明渡さないので、原告は、所有権に基き、被告高木鶴雄他四名に対しては、同第一物件目録記載の物件の明渡、被告高木鶴雄に対しては、同第三物件目録記載の建物収去及び同第二物件目録記載の物件の明渡を求める。またその余の被告林壮行、同木下酒造合資会社、同織田信太郎に対しては、第一次請求として、原告の前記の抹消登記手続を求め、右第一次請求が理由がないときは、予備的請求として、原告が前記仮登記に基き所有権移転登記を申請するについては不動産登記法の改正により同法第百五条第一項に基き、利害関係人たる右被告三名の承諾書又は、これに対抗し得べき裁判の謄本を必要とするのに、右被告三名は、任意に承諾をしないので、これが承諾を求める、と述べ

被告高木鶴雄他四名の抗弁事実を否認し、

被告林壮行主張の抗弁に対し、別紙第一、第二物件目録記載の物件に同被告主張の如き、根抵当権が設定されていることは認めるが、その余の事実は否認する。原告が被告高木鶴雄に対する債権の満足を得るのに根抵当権実行の方法によらず、代物弁済の方法によつたのは、別紙第一、第二物件目録記載の物件には、別紙登記及び仮登記の表示記載の如く、民法第三百九十五条にいわゆる短期賃貸借が存在し、根抵当権の実行に支障が存するのみならず、根抵当権の実行には、相当の年月を必要とするところから、右の如く、代物弁済の方法をとつたものであつて、何等の不当はない、と陳述し

立証として、甲第一ないし第九号証、第十号証の一ないし六、第十一ないし第二十号証を提出し証人谷中滋煕、同宗田亘弘の各証言を援用し、乙第四号証の原本の存在及び成立並びにその余の乙号各証の成立を認め、丙第一号証の成立は不知、と述べた。

被告訴訟代理人は、原告の請求を棄却する、訴訟費用は、原告の負担とする、との判決を求め、

一、被告高木鶴雄他四名は、答弁として、原告主張の請求原因一の事実は、原告が、その主張する如き一方的予約完結権を有するとの点を除き、これを認める、同請求原因二のうち被告高木鶴雄が原告主張の約束手形七通を振出し、右手形が不渡となつたこと及び原告が、昭和三十四年一月二十一日、被告高木鶴雄他四名に対し、別紙第一、第二物件目録記載の物件を、代物弁済として取得する旨の通知を発し、右通知が翌二十二日、右被告等に到達したことは認めると述べ、抗弁として右約束手形七通のうち別紙手形目録記載の第一、第四、第五の手形は、原告銀行に右三通の手形金合計二百八十五万円と同額の定期預金をするため振出したものであり被告高木鶴雄は、原告に対し、右定期預金債権二百八十五万円及びこれに対する年六分の利息債権を有していたので、右第一、第四、第五の手形金は、右定期預金を以て支払われており、その当時被告高木鶴雄は、原告に対し右利息債権金十七万一千円及び他に二口合計金二十六万五千円の定期預金債権を有し以上各債権は、弁済期が到来していたので、原告の前記代物弁済予約完結の意思表示がある以前に、原告に対し、原告の被告高木鶴雄に対する債権と対当額で相殺する旨の意思表示をしている。したがつて原告の被告高木鶴雄に対する債権は、右限度において消滅しており、したがつて原告の前記予約完結の意思表示はその効がない、と陳述し、

二、被告林壮行は、答弁として、原告の主張事実中、別紙第一、第二物件目録記載の物件が原告主張の如く被告高木鶴雄、他四名の所有であつたこと、及び右各物件につき原告主張の如き各登記仮登記がなされていることは認めるが、その余の主張事実は不知と述べ、被告高木鶴雄、他四名主張の前記抗弁を援用し、更に抗弁として、かりに原告と右被告高木鶴雄他四名間に、別紙第一、第二物件目録記載の物件につき、原告主張の如き代物弁済の予約がなされ、これに基き、その後原告主張の如き右予約完結の意思表示がなされたとしても、右各物件については、右予約と同時に、右当事者間において、原告と被告高木鶴雄間の金融取引上の債務につき、第一順位の債権極度額金三百五十万円の根抵当権が設定されているのであつて、右第一、第二物件目録記載の物件は右当時において既に金一千五百万円以上の価値を有していたのであるから、原告が金四百万円に満たない原告主張の被告高木鶴雄に対する債権を回収するには、右根抵当権を実行すれば充分である。しかるに原告が敢て右根抵当権実行の方法を回避し、右物件を代物弁済として取得したのは、右物件価額と、自己の債権額との差額を不当に利得せんとするものであつて権利の濫用というべく、前記代物弁済予約完結の意思表示は無効である、と陳述し、

立証として、

一、被告林壮行を除くその余の被告等は、乙第一号証の一ないし四、第二号証の一ないし七十九、第三号証の一ないし四、第四号証を提出し、被告高木鶴雄本人尋問の結果を援用し、甲号各証の成立は認める、と述べた。

二、被告林壮行は、丙第一号証を提出し、甲第十号証の一ないし六、第十一ないし第十四号証の成立を認め、同第一、第二号証の官公署作成部分の成立を認め、その余の部分の成立は不知、同第三ないし第九号証、第十五号証の成立は不知と述べた(甲第十六ないし第二十号証の認否未了)

理由

別紙第一物件目録記載の各物件は、被告高木なつゑが十二分の四、同高木鶴雄、同高木栄、同高木節子及び同高木茂雄が各十二分の二宛の持分で共有する物件であり、別紙第二物件目録記載の物件は、被告高木鶴雄の単独所有物件であつたこと及び、右各物件に原告主張の如き所有権移転請求権保全の仮登記及び原告が請求原因第三項において主張する被告林壮行、同木下酒造合資会社、同織田信太郎を権利者とする登記及び仮登記がなされていることは、原告と、被告木下酒造合資会社及び同織田信太郎を除くその余の被告との間において争がなく、被告木下酒造合資会社及び同織田信太郎は、右事実を明らかに争わないので、自白したものとみなすべく、被告高木鶴雄他四名が、原告との間に右第一、第二物件目録記載の物件につき昭和三十一年四月十九日、被告高木鶴雄が原告に対し、当時負担し、及び将来負担することあるべき金融取引上の債務につき、被告高木鶴雄が履行を怠つたときは、以上各物件を金三百五十万円の代物弁済として原告が取得する旨の予約をしたことは原告と被告高木鶴雄他四名間においては争がなく、その余の被告との間においては原告と被告林壮行を除くその余の被告間には成立に争がなく、原告と被告林壮行間には、官公署作成部分について成立に争がなく、その余の部分は、証人宗田亘弘の証言によつて成立の認められる甲第一号証及び右証言によつてこれを認めることができ前記甲第一号証並びに本件口頭弁論の全趣旨に徴し、右代物弁済の予約は、原告において一方的完結権を有していたことが認められる。

而して原告と被告林壮行を除くその余の被告間において成立に争がなく、被告林壮行との間においては、証人谷中滋煕の証言によつて成立の認められる甲第三ないし第九号証、第十五号証原告と被告林壮行を除くその余の被告間において成立に争がなく、被告林壮行との間においては証人宗田亘弘の証言によつて成立の認められる甲第十六号証及び、証人谷中滋煕、同宗田亘弘の各証言並びに本件口頭弁論の全趣旨を総合すると、原告は、その主張の如く、被告高木鶴雄に対し、手形貸付の方法で融資を続けていたが、同被告は、昭和三十四年一月二十一日現在、別紙手形目録記載の約束手形七通による合計金三百九十三万八千円の支払を遅滞している事実を認めることができ、右認定を左右し得べき証拠はない。

被告木下酒造合資会社、同織田信太郎を除くその余の被告等は、原告の被告高木鶴雄に対する右債権は、相殺により消滅した旨抗弁するけれども右抗弁は、その主張自体不充分であつて、主張責任を果していないばかりでなく、この点に関する被告高木鶴雄本人尋問の結果は信用し難く、他に充分な証拠もないから右抗弁は、到底採用できない。

而して原告が被告高木鶴雄の前記不履行を理由に前認定の代物弁済の予約に基き、昭和三十四年一月二十一日、被告高木鶴雄他四名に対し、右同日附書面を以て、前記第一、第二物件目録記載の各物件を代物弁済として取得する旨の通知を発し、右通知が翌二十二日、右各被告等に到達したことは、原告と被告高木鶴雄他四名間においては争がなく、原告とその余の被告間においては、成立に争のない甲第十号証の一ないし六によつてこれを認めることができる。

そこで被告林壮行の主張する原告の右代物弁済予約完結の意思表示は、権利の濫用であつて無効であるとの抗弁につき検討するに、別紙第一、第二物件目録記載の物件に、前記代物弁済予約のほかに、これと同時に同被告主張の如き極度額金三百五十万円の第一順位の根抵当権設定がなされていることは原告の認めるところであるけれども、右当時右各物件が同被告主張の如く金一千五百万円以上の価値を有していたものと認むべき証拠はないのみならず金銭債務の弁済につき、右債務額に数倍する価値ある物件に代物弁済の予約がなされたとしても、右契約が債権者において暴利を得るため、右物件を当初から処分する意図で、債務者の窮迫、軽率、無経験に乗じてなされた等、特段の事由がない限り右契約は直ちに無効とはいえず、また金銭債務の負担に際し、抵当権の設定と同時に、代物弁済の予約がなされた場合には、期限に右債務の弁済がないときは、抵当権を実行するか又は代物弁済の予約を完結させるかは、債権者が自由に選択し得るところであるから、前記特段の事由につき何等認むべきもののない本件においては、原告が前記根抵当権実行の方法をとらず、前記のとおり、代物弁済の予約完結の方法をとつたからといつて、これを以て、権利の濫用となすことはできず、このことは原告が、相互銀行であるからといつて、結論を異にすべき理由はない。したがつて被告林壮行の前記抗弁は、採用することができない。

以上のとおりであるから、別紙第一、第二物件目録記載の物件は前記代物弁済により原告の所有に帰したものといわなければならない。したがつて、被告高木鶴雄他四名は、第一物件目録記載の物件につき、原告に対し、これが所有権移転の本登記手続及びこれが明渡をなし、また被告高木鶴雄は、別紙第二物件目録記載の物件につき、原告に対し、これが所有権移転の本登記手続及びこれが明渡をなすべき義務あるは明らかである。

そこで次に、原告の被告林壮行、同木下酒造合資会社、同織田信太郎に対する抹消登記手続を求める第一次請求の当否につき検討するに、右被告三名を権利者としてなされた原告主張の登記ないし仮登記が、原告を権利者としてなされた前記所有権移転請求権保全仮登記後になされたものであることは明らかであるところ、本件におけるが如く、甲が乙に所有権移転の仮登記をした不動産について、その後甲が丙に所有権移転の登記をした場合、乙が右の仮登記に基き、本登記をするには、いかなる手続によるべきかについては、従来幾多の対立する見解が存したことは衆知のとおりであり、不動産登記法は、これが立法的解決のため、今次の改正において、第百五条の規定を新設し、所有権に関する仮登記をした後その本登記を申請する場合において、登記簿上利害の関係を有する第三者があるときは、申請書にその者の承諾書又はこれに対抗し得る裁判の謄本を添附させることとし(第一項)、かかる本登記の申請がなされた場合には、登記官吏は、その本登記をなすと同時に、右の第三者の権利を職権で抹消することとしたのである(第二項)、したがつて、かかる規定が設けられた以上仮登記権利者が本登記をなすべき実体上の要件を具備するに至つたときは、右の第三者は、仮登記権利者が本登記を申請するにつき、承諾の意思表示をなすべき義務を負うものと解すべきである。

以上説示のとおりであるから、前記被告三名に対し、原告主張の如き登記及び仮登記の各抹消登記手続を求める原告の第一次請求は、不動産登記法改正後の今日においては不適法として却下すべきである。しかしながら、右被告三名が、同法第百五条第一項、第百四十六条第一項にいわゆる本登記につき登記上利害の関係を有する第三者に該当することは明らかであるから、これに対し本登記手続を申請するについて、承諾義務の履行を求める原告の予備的請求は理由があるものというべく、正当として認容すべきものである。

そして被告高木鶴雄が、別紙第一物件目録記載の宅地上に、別紙第三物件目録記載の建物を所有していることは、同被告の明らかに争わないところであるから、原告の右主張事実は、同被告において、これを自白したものとみなす。そして右建物所有、敷地占有の権原については同被告は、何等主張、立証していないから、同被告は原告に対し右建物を収去し、その敷地を明渡すべき義務あるものといわなければならない。

以上認定判断のとおりであるから、原告の本訴請求は、被告高木鶴雄他四名に対し、別紙第一物件目録記載の物件について前記代物弁済を原因とする所有権移転登記手続とこれが明渡を求め、被告高木鶴雄に対し、同第二物件目録記載の物件につき前記代物弁済を原因とする所有権移転登記手続と、同第三物件目録記載の物件収去及び同第二物件目録記載の物件の明渡を求め、被告林壮行、同木下酒造合資会社、同織田信太郎に対し、前記所有権移転本登記手続をするについて承諾を求める部分はいずれも正当として認容すべきも被告林壮行、同木下酒造合資会社、同織田信太郎に対し、前記登記及び仮登記の抹消登記手続を求める第一次請求は、これを却下し、原告が前記所有権移転登記手続をするについて、これが承諾を求める予備的請求は、これを正当として認容すべく、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九十二条、第九十三条、仮執行の宣言につき、同法第百九十六条を各適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 村上明雄)

第一物件目録

(1)  大阪市西区九条南通一丁目百四拾六番ノ四

一、宅地 百参坪四合七勺

(2)  大阪市西区九条南通壱丁目百四拾四番地ノ拾

一、道路 拾四歩

(3)  大阪市西区九条南通壱丁目百四拾四番ノ拾壱

一、宅地 八拾弐坪六合弐勺

第二物件目録

大阪市西区九条南通壱丁目百四拾六番地ノ四地上

家屋番号 同町第五五五番

鉄筋コンクリートブロツク造陸屋根

弐階建店舗並居宅及倉庫

建坪 四拾五坪壱合

弐階坪 四拾五坪壱合

第三物件目録

大阪市西区九条南通一丁目百四十六番の四、百四十四番地の十一両地上

一、木造亜鉛鋼板葺平家建物置一棟

建坪約六坪

一、木造亜鉛鋼板葺平家建犬小屋一棟

建坪約三坪

登記及び仮登記の表示

以下の登記ないし仮登記は、いずれも大阪法務局江戸堀出張所の受付にかゝるものである。

第一、別紙物件目録(1) 記載の宅地に対する登記ないし仮登記

一、所有権移転請求権保全仮登記

昭和参拾弐年拾弐月弐拾壱日受附第弐壱〇参八号

原因 同年同月拾弐日代物弁済予約

権利者 此花区四貫島千鳥町拾番地 林壮行

二、所有権移転請求権保全仮登記

昭和参拾参年八月七日受附第壱弐八四六号

原因 同年七月参拾壱日代物弁済予約

権利者 和歌山県伊都郡かつらぎ町大字中飯降八拾五番地 木下酒造合資会社

三、根抵当権設定登記

昭和参弐年拾弐月弐壱日受附第弐壱〇参七号

原因 同年同月拾弐日継続的商品取引契約に基く同日根抵当権設定契約

根抵当権者 此花区四貫島千鳥町拾番地 林壮行

債権極度額 金参百万円也

債務者 西区九条南通壱丁目百四拾六番地の四 高木鶴雄

共同担保 同所百四拾四番地の拾、同番の拾壱、壱六四番地の四各土地及家屋番号第五五五番建物

四、根抵当権設定登記

昭和参参年八月七日受附第壱弐八四五号

原因 同年七月参壱日資金貸付手形の割引等についての同日根抵当権設定契約

根抵当権者 和歌山県伊都郡かつらぎ町大字中飯降八拾五番地 木下酒造合資会社

債権元本極度額 金五百万円也

特約 債務者は債務を期日に履行しない時は日歩金五銭の遅延損害金を支払う事

債務者 西区九条南壱丁目百四拾六番地の四 高水鶴雄

共同担保 同所百四拾四番の拾、同番の拾壱、百四拾六番の四各土地及右地上家屋番号第五五五番建物

五、賃借権設定登記

昭和参参年八月弐拾六日受附第壱参九六八号

原因 同年同月拾日賃貸借契約

賃借人 京都市北区小原北町五拾六番地の壱 織田信太郎

存続期間 締結の日より向う満五ケ年

借賃 壱ケ月金五万円也

同支払期 契約と同時に全期間分を全払いとす

特約 物件の転貸又は権利の譲渡を許す。

第二、別紙第一物件目録(2) 記載の道路に対する登記ないし仮登記

六、所有権移転請求権保全仮登記

仮登記の内容は、前記第一の一記載の仮登記と同様である。

七、所有権移転請求権保全仮登記

仮登記の内容は、前記第一の二記載の仮登記と同様である。

八、根抵当権設定登記

登記の内容は、前記第一の三記載の登記と同様である。

九、根抵当権設定登記

登記の内容は、前記第一の四記載の登記と同様である。

十、賃借権設定登記

登記の内容は、前記第一の五記載の登記と同様である。

第三、別紙第一物件目録(3) 記載の宅地に対する登記ないし仮登記

十一、所有権移転請求権保全仮登記

仮登記の内容は、前記第一の一記載の仮登記と同様である。

十二、所有権移転請求権保全仮登記

仮登記の内容は、前記第一の二記載の仮登記と同様である。

十三、根抵当権設定登記

登記の内容は、前記第一の三記載の登記と同様である。

十四、根抵当権設定登記

登記の内容は、前記第一の四記載の登記と同様である。

十五、賃借権設定登記

登記の内容は、前記第一の五記載の登記と同様である。

第四、別紙第二物件目録記載の建物についての登記ないし仮登記

十六、所有権移転請求権保全仮登記

仮登記の内容は、受附番号が第弐壱〇参九号であること以外は、すべて前記第一の一記載の仮登記と同様である。

十七、所有権移転請求権保全仮登記

仮登記の内容は、前記第一の二記載の仮登記と同様である。

十八、根抵当権設定登記

登記の内容は、前記第一の三記載の登記と同様である。

十九、根抵当権設定登記

登記の内容は、前記第一の四記載の登記と同様である。

二十、賃借権設定登記

登記の内容は、受附番号が第壱参九六九号、存続期間が締結の日より向う満参ケ年、借賃が壱ケ月金拾万円也であること以外は、すべて前記第一の五記載の登記と同様である。

手形目録

第一

(1)  金額 五〇〇〇〇〇円

(2)  支払期日 昭和三三年六月三日

(3)  支払地 大阪市

(4)  支払場所 株式会社幸福相互銀行九条支店

(5)  振出地 大阪市

(6)  振出日 昭和三三年四月五日

(7)  振出人 高木鶴雄

(8)  受取人 株式会社幸福相互銀行

(3) ないし(5) (7) (8) は第二以下の手形について各共通であるから省略する

第二

(1)  金額 二八八〇〇〇円

(2)  支払期日 昭和三三年六月一六日

(6)  振出日 昭和三三年三月一七日

第三

(1)  金額 三〇〇〇〇〇円

(2)  支払期日 昭和三三年六月二五日

(6)  振出日 昭和三三年四月二五日

第四

(1)  金額 二〇〇〇〇〇〇円

(2)  支払期日 昭和三三年六月二〇日

(6)  振出日 昭和三三年五月二〇日

第五

(1)  金額 三五〇〇〇〇円

(2)  支払期日 昭和三三年六月二〇日

(6)  振出日 昭和三三年五月二〇日

第六

(1)  金額 二〇〇〇〇〇円

(2)  支払期日 昭和三三年七月二五日

(6)  振出日 昭和三三年五月二六日

第七

(1)  金額 三〇〇〇〇〇円

(2)  支払期日 昭和三三年七月一五日

(6)  振出日 昭和三三年五月一五日

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